
「博多町家」ふるさと館トップページ > 館長だより > 音さんの宅地建物寄進碑。




2009年10月 1日 17:51
「秋の夕暮れは寂しいなあ」とは、博多生まれの風雲児川上音二郎さんの最後の言葉です。場所は自らが建てた大阪の帝国座の舞台。妻の貞奴や座員たちに見守られての終焉でした。48歳。命日は1911年11月11日。誕生日も元治元年1月1日という1並びは、音さんの際立った人生を象徴しているようです。
ふるさと館の前の櫛田神社には音さんと貞奴夫婦の宅地建物寄進の石碑があります。日付は明治44年9月。建物は音さんが博多に帰ったときに宿泊するため建てた二階建てで、一階を貸して家賃を櫛田さんに納めるというものでした。
明治44年は音さんの最晩年です。実は音さんは腹膜炎の持病を抱えていました。1898年一座を率いてサンフランシスコに上陸。シアトル・シカゴとハードな公演旅行のうち、ボストンで盲腸炎をこじらせ腹膜炎の大手術。その後の大活躍の間も再発を繰り返し命取りになったのです。公開直前だったイプセン作「人民の敵」の練習中でした。公害に立ち向かう主人公の姿は民権家音二郎に重なります。
今年も11月11日承天寺での音二郎忌が近づいてきました。今年はことのほか秋は早く、櫛田の銀杏が金色に輝くのもすぐでしょう。もしかしたら音さんはふるさと博多の夕日に染まる櫛田の銀杏に思いを馳せていたのかもしれません。
● 長谷川法世 ●
漫画家。博多っ子純情やNHK朝ドラ「走らんか!」で全国に博多ブームを巻き起こした。平成十五年より、「博多町家」ふるさと館館長。
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