「博多町家」ふるさと館

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2017年1月2日

博多のお雑煮


博多のお雑煮
お雑煮ほどさまざまなだしや具材の変化に富んだ料理はないでしょう。全国各地のお国自慢のひとつでもあります。
生粋の博多っ子だった波多江五兵衛さん=明治39(1906)年生まれ=は、その著作「冠婚葬祭 博多のしきたり」(1974年、西日本新聞社)の中で、博多の雑煮についてこう書いています。
「博多ぞうにのよさはダシのきいたすまし汁のうまさにあります。コンブ、シイタケ、カツオ節、焼きアゴ(トビウオ)の四つがほどよくミックスした味が身上です。餅のほかに入れる具はカツオ菜、シイタケ、鯛の切り身だけです。ときには里芋、焼き豆腐までは加えることもありますが、あまりゴタゴタと入れると、せっかく苦心したすまし汁の味が変わってしまいます」
今から40年ほど前に出版されたこの本の時代には、栗の小枝を削った丈夫な「栗はい箸」を使うのが正月の習わしであったことも記されていますが、最近はこの箸を使う習慣は廃れてしまったようです。当館のすぐ近くにある老舗の箸屋さんでも「栗はい箸」を販売しなくなって久しいとのこと。ちなみにこの家の雑煮のメインのダシは、アゴではなく博多湾で釣ってきて自宅で干したハゼだとか。
東中洲の川丈旅館のごりょんさんとして活躍された長尾トリさん=明治42(1909)年生まれ=は、自著「ごりょんさんの博多料理」(1985年、葦書房)で雑煮について「三十一日の最後の仕事は雑煮の用意。小うるさい約束ごとは種々言い伝えられているが、時代が変わるにつれて少しずつ切り捨てて来た。」とした上で、「魚も、古老(私も)に言わせるとアラとタイが本当で、ブリは大正、昭和の初めから主になったようなもの。今はブリが本役でアラ、タイは添えになっている。出し汁も焼きアゴ(トビウオ)と昆布で取る」述べています。それぞれの家庭で少しずつダシの取り方が違うことがうかがえます。
いずれにしても、博多の雑煮はスメ(すまし汁)と丸餅が決め手。元旦はごりょんさんに感謝する日であります。あなたのお家の雑煮はいかがですか。

【写真】博多雑煮(右)。焼きアゴ(同中央上)。串に刺した具材(同左)。箸は栗はい箸ではありません。「ごりょんさんの博多料理」より

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